【ギャラリー門間】菅原一剛写真展 牧野富太郎の植物標本が織りなす生命の輝き

アマドコロの標本の写真 ギャラリー

NHK朝ドラ「らんまん」のモデル、植物学者の牧野富太郎博士。

その博士が利尻島で採取した貴重な植物標本を、写真家・菅原一剛氏が捉えた写真展が、札幌のギャラリー門馬で開催されています。

まるで生きているかのような小さいながらも力強い植物たちと、博士の植物に対する深い愛情を感じられる写真展です。

MAKINO 植物の肖像‐利尻 Ichigo Sugawara 菅原一剛写真展

ギャラリー門馬は、開放的でゆったりとした空間が広がる素敵なギャラリー。

エントランスと2つの展示室で、菅原一剛氏の作品をじっくりと鑑賞できます。

エントランス:冬の利尻山を望む

ギャラリーのエントランスフロア。

エントランスホールの壁面には今回のテーマでもある、冬の利尻山の大きな写真が展示されています。

大きなガラス張りの壁からはギャラリーの外の雪景色が見え、作品と現実の風景が融合したような感覚を覚えました。

写真の反対側の壁面には小さな図書コーナーがあり、菅原さんの写真集や芸術の森で開催された展覧会の図録が並んでいます。

椅子もあるので、ゆっくり写真集を眺めることができました。

会場の入口にはテーブルがあり、作品のプライスリストが置かれ、展示されている植物の名前を知ることができます。

展示室1 大きな植物標本の作品群

展示室1。
奥に見えるのは展示室2。

エントランスホールを通りまずは第1展示室。大きな作品が中心の展示です。

利尻島に自生する、いろいろなかたちの植物が大迫力で鑑賞することができます。

ハイマツのまっすぐにシュッとのびている何本もの細い葉。

ボタンキンバイの一生懸命光に向かって広げている葉や花。

展示室内の様子

植物の葉や茎の形だけではなく、葉の裏の模様や、根の大きさ。混み具合。

小さいながらも、大地に根を張り、しっかりと生きていく寡黙な植物たち。

その生命力が標本とされても伝わってくるような、そんな写真です。

どの植物からも生きているときの生命感が感じられ、野山にあるときの様子が目の前に浮かんでくるようです。

展示室2 小さな作品群

間仕切りでゆるやかに区切られた奥の展示室はガラス壁に向かって小品の展示が10点以上並びます。

エゾノコザクラやシコタンハコベなどのごく小さな花をつける植物たちは、まるで歌ってリズムをとっているかのように見え本当に可愛らしい。

今はまだ雪の下で眠る小さな植物たちは、春をきっと待ち望んでいることでしょう。

牧野富太郎について

日本の植物学の父と呼ばれる日本の植物学者です。

NHKの朝のドラマ「らんまん」のモデルにもなりました。

94歳で死去するまで、膨大な数の植物標本を作成し、新種の植物を発見し命名するなど精力的に研究を続けた牧野博士。

旧制小学校を中退しているものの理学博士の学位を取得しており、命名した植物は1500種を超えます。

植物標本について

植物標本はA3サイズの台紙に挟んで作ることが一般的ですが、植物の特徴が後に判別できるように葉や花、根などできるだけ元のかたちのまま広げて、大きい場合には適当な場所で茎などを折って作ります。

また、採取後できるだけすぐにかたちを整えないと、萎れてしまいきれいな標本を作ることができないため、台紙に見栄え良く植物を配置するという作業は簡単そうに見えて実は意外と難しいのです。

センダイヨシノと高知新聞

植物標本たちの写真の中に、2022年の高知新聞がありました。

1862年4月24日(旧暦)、牧野博士は高知県高岡郡佐川町に生まれます。その生誕160周年を記念して掲載された新聞ですが、このときに使われたのが菅原さんの標本写真です。

博士が採取したセンダイヨシノの標本を世界最高水準の1億5千万画素(15K)のカメラで撮影し、本紙をラッピングしたグレー味を帯びた淡い桜色の新聞。

その色の儚さ、美しさは本物の桜をまるで永遠に閉じ込めたような風合いです。

博士の植物に対する思いが時を越え、桜とともに高知のひとつひとつの家庭に届けられたようで深い感動を覚えました。

菅原一剛さんのカメラ

菅原さんの撮影した精密な植物の写真を見ることで、標本を顕微鏡で覗きながら研究していた牧野博士の気持ちに少し近づける気がします。

高知新聞の記事には、15Kという超驚異的な解像度のデンマーク製のカメラで撮影された、という記述がありました。

調べてみるとPHASE ONE(フェーズワン)という本社がデンマークにある会社があります。

超高画質での撮影ができるので、航空写真にも使われるようです。

このカメラで撮影されたからこそ、植物たちの細部まで鮮明に捉えられた美しい写真が生まれたのでしょう。

利尻島について

北海道北部にある島。

北海道稚内市の西方52kmに位置しています。

利尻富士町と利尻町の2町で構成されていて、利尻礼文サロベツ国立公園に指定されています。

島の中央には日本百名山の利尻山(1,721m)があり、低緯度帯ながら高山植物を多く見ることができ固有種も多く存在する希少な植物相を持つ島です。

札幌からは丘珠空港から飛行機で行くか、稚内まで陸路で行きフェリーで行くことができます。

会期&開館時間

2025年3月14日(金)〜3月29日(土)

11:00〜18:00

火・水 休廊

アクセス&駐車場情報

〒064-0941 札幌市中央区旭ケ丘2丁目3−38

℡:011‐562‐1055

駐車場:ギャラリー前に2台ほど

地下鉄円山公園駅からJR北海道バス

[ロープウェイ線]旭ヶ丘高校前下車

周辺施設

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まとめ

静かな空間の中で、ただただ植物たちを感じることができる贅沢な時間。

言葉を超えて、まっすぐに作品と向き合うことができる展示でした。

植物が持つそれぞれの存在感、牧野博士の植物への情熱、そしてその2つに対する菅原さんの深い想いが伝わってくる素晴らしい写真展です。

ぜひ、あなたもギャラリー門馬に足を運んで、感じてみてくださいね。

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